
外輪山の都道沿いにある、希少なモウセンゴケの生育地が
危機に瀕していると噂に聞いて行ってみました。
東京都環境局自然環境部の発行した絵地図『大島・利島』には、
この付近が「コモウセンゴケ」の自生地と記されています。
同じモウセンゴケ科のモウセンゴケとコモウセンゴケは、
とてもよく似ているようです。
見分けるポイントは、葉の形。

↑左側の2本をスプーン・おたま型、
右側の2本をおしゃもじ・へら型、とします。(笑)
モウセンゴケは葉が丸く柄が長い、スプーン・おたま型。
コモウセンゴケは、おしゃもじ・へら型。
自然愛好会編集の『伊豆大島の植物』134ページ記載種は、
モウセンゴケの誤認・誤記ということになります。
2008年に改訂しましたが、
まだいくつか誤りが見つかっています。トホホ
食虫植物のモウセンゴケは、名前に「コケ」とついていますが、
種子植物の多年草です。丸い葉の表面に繊毛が密生し、
小さな昆虫を粘着させて消化してしまいます。
根から吸収した養分で花を咲かせることは出来るそうですが、
昆虫の栄養分をプラスすれば種子をより多く残せるそうです。
多年草ですが残念ながら今は冬枯れで、葉がないので地上部はほとんど見られません。
これ↑は図鑑の転写です(汗)
『東京都の保護上重要な野生生物種(島しょ部)
~東京都レッドリスト~ 2011年版』に
載っているだろうと思いましたが、なぜかありません!
目立たない植物なので記載モレでしょうか?
国立公園の特別地域には「指定植物」が選定されていて、
採取などには環境大臣の許可が必要です。
以前、大島支庁で頂いた資料を見たら、
ありました!
モウセンゴケは当国立公園の指定植物です!
指定植物の選定理由は、
「観賞用・園芸用・薬草用などとして
採取されやすく、規制を行わなければ
絶滅する恐れのある植物であること。
[4]他の生物と共存関係にある種、
b 、食虫植物
」などとされています。
詳しくは、環境省のホームページで、関係法令・各種資料を開いて、
「国立・国定公園特別地域の指定植物」をご参照ください。
指定植物は、他にシマタヌキランやスカシユリなど・・・
たくさんあります。
工事がストップしているらしいと噂で聞いたので、「指定植物」に選定されていて良かったなあ、と思ったのですが、
工事は再開され生育地は崩されていました!!!
「指定植物」制度は、抑止力にならないのですね(涙)
すぐ許可が出てしまったのでしょうか?
道路災害防除工事・・・小さな崖ですが、道路管理者の東京都としては、
崩れる危険を防除しておかなければならない・・・
ということなのでしょう。
削られた道路の反対側には、元町を見下ろせる見晴し台があり、
観光タクシーを止めて、お客様にこの場所も案内し、
モウセンゴケやイズノシマダイモンジソウ、
コケリンドウなどを
ご覧頂いていた運転手さんもいらしたようです。
残念ながら、
公共事業のアセスメント(影響評価)は、
一定規模以上の工事でないと行われません。
法律ではそうなっていても、国立公園の特別地域内です。
大島へ観光でいらしたお客様の多くが通る貴重な場所です。
その場所がどんな植物の自生地なのか、
他の季節の様子も確認すべきですね。
まだ削られていないところを見てみると、トウゲシバやクラマゴケの仲間なども見られました。
工事の途中でも、「そこには貴重な植物があるよ」と指摘があったら、
遺跡が出土した場合に文化財保護法で工事をストップして
充分調べ保全するように、新たな仕組みが必要かも知れません。
モウセンゴケとダイモンジソウは移植されるそうです。
上手くいくことを見守りたいと思います。
(なるせ)