ウミガメの上陸


 ダイビング中にウミガメに出会った経験がある方も多いと思います。水中で悠々と泳ぐ姿や岩陰で休んでいるところ、あるいは、人影に気付き慌てて逃げて行く場面でしたでしょうか?

 この写真は昨日撮影した、アカウミガメの上陸跡です。重機のキャタピラか小型トラクターのタイヤ跡のようにも見えます。

 一生のほとんどを海の中で過ごすウミガメは、泳ぐことに適した体に進化し、陸上を移動するのは苦手なようです。産卵に来た母親ガメの足跡を見る度に、気の毒に感じてしまいます。外敵に見つかりにくいよう夜の闇に隠れて上陸し、産卵して帰ります。その証拠が、朝になって浜に残された移動跡と産卵巣を埋めて隠した砂のカモフラージュです。

 北太平洋でのアカウミガメの繁殖は、毎年4月頃に沖縄など南西諸島から始まり、桜前線のように徐々に北上してきます。伊豆諸島や関東沿岸は、繁殖地の北限域で、5月下旬~8月頃に産卵します。大島では、もう1種アオウミガメも産卵します。北太平洋最北限の産卵が2回確認されています。

 今、イタリアで開催されているG8ラクイラ・サミットのロゴマークに描かれているのは、4頭のウミガメです。ラクイラの東側のアドリア海は、アカウミガメの生息地として知られているからでしょう。

 太平洋の島々--ハワイ諸島ミクロネシアポリネシアなど--では、古来からウミガメを「神」や「神の使い」と云って幸運のしるしとして崇めてきました。私たちの暮らす列島ヤポネシアでも、先住民族アイヌの人々の伝説には、人間界を守るのはフクロウの神フフンボカムイ、海中の魚介のすみかを守るのはウミガメの神エチンケカムイで・・・という物語があります。ウミガメをアイヌ語では、アトウイ・コロ・カムイ(海を支配する神、海を所有する神)とも言うそうです。
 
 不思議な物事は神に通じると考えたのでしょうか? 浦島太郎の話も不思議なことばかりです。

 IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでは、国内で産卵するウミガメ3種の内、アカウミガメとアオウミガメを「絶滅危惧種」に、タイマイはより厳しい「近絶滅種」に指定しています。ウミガメの減少の原因は、海洋汚染、漁業の混獲、そして繁殖地の砂浜の破壊などが上げられています。

 自然の砂浜は、波や風が砂を絶えず移動させ、洗浄し、乾燥させ、やわらかく清潔に保たれています。夜は夜らしく暗く静かな海岸は、ヒトが夕涼みをしても心地よく感じられるはずです。そんな浜に、そっと上陸して来るウミガメだから、自然度の高さを表すバロメーター(指標生物)と言われるのでしょう。

 ヒトにも、他の生き物にとっても、気持ち良く利用できる砂浜をいつまでも残せますように。 Think Globally,Act Locally!
  
なるせ