6年目の悲劇

2019年の強風の台風のあと、裏砂漠では地表面に積もっていた小石(スコリア)が風で飛ばされ、木々の皮が半分剥がれ落ち、森の中でも多くの木が倒れました。

そのとき、めくれ上がった木の根のすき間には、まだ地上に出てくる前のセミの幼虫がいて、思わず息をのんだことを覚えています。

それ以来、何度もその場所に通い続けてきました。

 

倒れた木の幹からは新しい枝が伸び、葉がつき、根元からも細い枝や若葉がいくつも出てきていました。

「幹と根の両方から再生していくのだろうか?」


そう思いながら、回復の様子を見守ってきたのです。

 

ところが、今年の10月17日。

お客様がその木を見て、「全部枯れてる。もうだめだな」と言いました。

驚いて幹の方を見ると、確かに枝先には葉が一枚もなく、細い枝だけが残り、先端はちぎれて折れていました。

根元からの再生も、今では細い一本を残すのみ。

2019年の台風以来、6年間順調に回復してきたので、このまま立派に成長していくと思っていました。

 

「いつから葉を落としてしまったのだろう?」と思って写真を調べてみると、少なくとも今年の7月には若葉を出していたようです。

植物のたくましさの象徴のようだったあの木が、力尽きて枯れてしまう—。そんなこともあるのだと驚きました。

 

思い返せば、今年の夏は猛暑が続き、7月から8月にかけて雨がほとんど降りませんでした。

「その影響かもしれない」と思い、久しぶりに樹海の中を歩いてみると、他の木々はまだ若葉を出し、懸命に再生しているように見えました。

個体差があるのか、それとも今は元気に見える木も、いずれ同じ運命をたどるのか…。

樹木の再生は一筋縄ではいかないようです。

 

森の木々たちは、めいっぱい頑張って生きているのだと感じました。

 

(かな)